木青壮クラブの
発展を祝して
旭川営林局長 甲斐原 一郎
 古代ギリシヤが後世に残した数多くの傑作のなかでも、とくにきわだって見事なのはユークリッドの『幾何学原論』であるといわれる。

この本は千年の長きにわたって揺らぐことのない真理とみなされたばかりでなく、聖書につぐ最大のベスト・セラーでもあった。

このいわば充ち足りた王国のなかで、多くの優れた数学者たちが典雅なおしゃべりをしていたのが幾何学発展の歴史であった。

ところで一八〇〇年代の始め、この王国と原理的に全く対立する非ユークリッド幾何学が誕生して、王国に大きなショックをあたえた。

この新原理の発見者は実は王国のなかでも最も礼儀正しくふるまっていたガウスであったが、彼は「野蛮人どものわめき声」を恐れて発表を手控えた。

発見の名誉は彼よりもずっと若くて、従って「野蛮人どものわめき声」を恐れなかったハンガリ人のボヤイとロシア人のロバチエフスキーの頭上に輝くこととなった。

 それ以後の幾何学王国の繁栄はこの二人の「若さ」と「野蛮を恐れない」たくましさに負うものといってよかろう。

 立木資源の減少、貿易自由化、欧州共同体の発展など北海道木材「王国」を揺るがす大波がいまわれわれの周囲に押しよせている。

そこでは王国伝統の典雅なおしゃべりー陳情書を中心にしたーだけでは間にあわず、なによりもボヤイとロバチエフスキーの出現が待望されている。

北海道木材界が曲がり角に来たというのはこのことであり、ボヤイとロバチエフスキーの母胎として木青壮クラブに大きな期待がよせられているのである。